MRSA保菌者の転院について

MRSA保菌者の転院について

MRSAは、すでに正常の人でも数%の頻度で保菌している病原体です。
たとえ鼻腔や咽頭での保菌チェックを行っても、偽陰性が3割程度あります。
このため、転院前のMRSA検査によるトリアージは意味がありません。医療機関内で適切な予防策を講じることで、MRSAの伝播を防止することが可能と考えるのが妥当です。

また、MRSA感染症を発症しても、これまでのバンコマイシンだけでなく、テイコプラニン、アルベカシン、リネゾリド、ダプトマイシンなど、すでに多くの治療薬が上市されています。昔の状況は大きく変化しています。多剤耐性緑膿菌や多剤耐性アシネトバクターのような、治療薬の極めて限られた耐性菌とは、現在のMRSAの位置づけは大きく異なります。

MRSA保菌者について、陰性化してからでないと転院が制限されることが、未だに行われています。最近では、緑膿菌が検出されただけで転院ができなくなることもあります。緑膿菌は、病院の施設の中には必ずいるはずで、土壌や、たとえばトマトなどの生野菜にもついています。 こうした対応は、現在の医療では全く根拠のない、全く意味のない対応だと、私たちは考えています。

医療人として行わなくてはならない事は、MRSA保菌患者の転院拒否ではなく、施設内の感染制御風土の醸成、適切な情報の伝達、適切な予防策の履行と考えています。

施設内でのセミナーなど、川崎市内の医療機関における感染制御を発展させるために、私たちはご協力いたします。 ご希望の際は、事務局までご連絡ください。